睡眠時無呼吸症候群とは?症状・原因・検査・治療を専門医が解説
「いびきがうるさい」「寝ているとき息が止まっていた」「日中眠くなる」。家族にそう言われて、不安になっていませんか。
気になって調べると、「無呼吸なのにお腹は動く」という言葉に行き当たった方もいるでしょう。実はそこに、大切なヒントが隠れています。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、眠っている間に呼吸が浅くなったり、数秒から数十秒止まったりをくり返す病気です。放っておくと、高血圧や心臓の病気、糖尿病、突然死などのリスクを高めます。
この記事では、症状・原因・セルフチェックから、検査と治療、放置したときのリスクまで、鼻に特化した当院の視点で整理しました。ご自身やご家族の状態を確かめる手がかりにしてください。
この記事でわかること
- いびきと睡眠時無呼吸症候群(SAS)の関係、閉塞型など3つのタイプ
- 「無呼吸なのにお腹は動く」のはなぜか、その見分け方
- 夜と昼にあらわれる症状と、自分でできるセルフチェック
- 肥満だけでない原因(あごの形・鼻づまり)と、若い人・やせ型でも起こる理由
- 放置したときのリスク(高血圧・心疾患・脳卒中・糖尿病)
- 検査の進め方(簡易検査・PSG)と、CPAP・マウスピース・鼻の手術という治療
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?いびきとの関係

睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に呼吸が止まる「無呼吸」や、浅くなる「低呼吸」を何度もくり返す状態です。
医学的には、10秒以上の呼吸停止を「無呼吸」と呼びます。これが1時間あたり5回以上あり、日中の眠気などをともなうと、SASと診断されます。
大きないびきは、その代表的なサインです。のどの空気の通り道が狭くなると、粘膜がふるえていびきが鳴ります。さらに完全にふさがると、いびきが止まって無呼吸になります。
つまり「いびき→無音→ブハッと再開」というパターンは、要注意のサインです。ご家族に指摘されたら、軽く考えないでください。
閉塞型・中枢型・混合型の3タイプ

SASには、大きく3つのタイプがあります。ほとんどの方は、のどがふさがる「閉塞型」です。
- 閉塞型:のど(気道)が物理的にふさがるタイプ。SASの大半を占める
- 中枢型:脳から呼吸の指令が出にくくなるタイプ。まれ
- 混合型:閉塞型と中枢型が混ざったタイプ
このうち、いびきや肥満、鼻・のどの構造が関係するのは閉塞型です。当院で扱う鼻づまりとの関わりが深いのも、このタイプになります。
いびきなのに「お腹は動く」のはなぜ?無呼吸の見分け方

結論から言うと、閉塞型では呼吸を続けようとするため、息が止まっていても胸やお腹は動き続けます。
閉塞型の無呼吸は、のどがふさがって空気が通らない状態です。ただ、体は「吸おう」とがんばり続けます。だから胸やお腹は上下に動くのに、鼻や口の空気は流れていません。
ご家族が「お腹は動いているから大丈夫」と感じても、実は無呼吸のことがあります。動いているのは呼吸の”努力”であって、空気が通っているとは限らないのです。
見分けるときの目安を挙げます。あくまで観察のヒントであり、診断は検査で行います。
- 胸やお腹は動くのに、鼻・口の前に手をかざすと空気を感じない
- いびきが急に止まり、しばらくして大きく息を吸い直す
- 動きにともなって、のどが「ヒュッ」と引き込まれるように見える
お腹が動くこと自体は、むしろ閉塞型でよく見られる特徴です。「動いているから安心」ではなく、空気が通っているかで判断してください。
睡眠時無呼吸症候群の症状(いびき・眠気・夜間)

SASの症状は、夜あらわれるものと、昼に響くものに分かれます。自分では気づきにくく、家族の指摘で見つかることも多い病気です。
夜(睡眠中)にあらわれる症状
睡眠中は、次のような症状が出ます。多くは、一緒に寝ている家族が先に気づきます。
- 大きないびき、いびきが止まって息が止まる
- 息苦しさで目が覚める、むせる
- 何度もトイレに起きる(夜間頻尿)
- 寝汗が多い、寝相が悪い
昼(起きているとき)にあらわれる症状
眠りが細切れになるため、日中にさまざまな不調が出ます。
- 朝起きたときの頭痛、すっきりしない感覚
- 日中の強い眠気、会議や運転中の居眠り
- 集中力・記憶力の低下、だるさ
とくに運転中の眠気は、事故につながる危険があります。「寝ても疲れが取れない」が続くなら、一度きちんと調べてください。
セルフチェック|こんなサインは要注意
まずはセルフチェックで、SASの可能性がどのくらいあるかを確かめてみましょう。当てはまる数が多いほど、受診をおすすめします。
- 大きないびきを毎晩のように指摘される
- 寝ているとき息が止まっていると言われた
- 朝起きても疲れが取れず、頭が重い
- 日中、会議中や運転中に強い眠気がある
- 夜中に何度も目が覚める、トイレに起きる
- 肥満ぎみ、または首まわりが太い
- あごが小さい、下あごが後ろに引っ込んでいる
3つ以上当てはまる場合は、SASの可能性があります。日中の眠気を測る「エプワース眠気尺度」という指標もあり、点数が高いほど注意が必要です。
ただし、これらはあくまで目安です。無呼吸の回数や重症度は、検査をしないとわかりません。気になる項目が多い方は、確かめる意味でも受診してみてください。
睡眠時無呼吸症候群の原因(肥満・あご・鼻づまり)

SASのもっとも多い原因は、のどの空気の通り道が狭くなることです。肥満はその代表ですが、原因はそれだけではありません。
おもな要因を整理します。複数が重なって、気道が狭くなることがよくあります。
- 肥満:首やのどまわりに脂肪がつき、気道が狭くなる
- あごの形:あごが小さい、下あごが後退していると気道が狭い
- 扁桃・アデノイド:のどの奥のふくらみが通り道をふさぐ
- 加齢:のどの筋肉がゆるみ、気道が落ち込みやすくなる
- 鼻づまり:鼻で息ができず、口呼吸になりやすい
若い人・やせ型でも起こる
SASは「太った中高年の病気」と思われがちです。でも、若い人ややせ型の方にも起こります。
日本人はもともと、あごが小さく奥行きの浅い骨格の方が少なくありません。太っていなくても、あごや扁桃の形で気道が狭ければ無呼吸は起こります。
「やせているから大丈夫」とは言い切れません。若くても強い眠気やいびきが続くなら、体型に関わらず調べる価値があります。
鼻づまりと無呼吸の関係
鼻がつまると口呼吸になり、いびきや無呼吸が悪化しやすくなります。鼻は、SASと深く関わっています。
鼻でスムーズに息ができないと、寝ている間も口が開きます。すると舌が奥に落ち込み、のどがいっそう狭くなります。CPAP治療がうまく続かない原因が、鼻づまりのこともあります。
アレルギー性鼻炎や鼻中隔弯曲症などが背景にある場合、その治療で睡眠が楽になることもあります。鼻づまりが気になる方は、鼻づまりの原因と解消法 や 鼻中隔弯曲症の治し方・手術 もあわせてご覧ください。
院長として診ていると、「鼻が悪いとは思わなかった」という方に多く出会います。鼻に特化した当院だからこそ、無呼吸の背景にある鼻の状態まで一緒に確認できると考えています。
放置するとどうなる?高血圧・心疾患などのリスク

SASを放置すると、全身の血管や心臓に負担がかかり、生活習慣病や重い病気のリスクが高まります。
無呼吸のたびに、体は酸素不足になります。そのたびに血圧が上がり、心臓や血管に負担がかかります。この状態が毎晩くり返されることで、次のような病気につながります。
- 高血圧(薬が効きにくいタイプも含む)
- 狭心症・心筋梗塞などの心臓の病気
- 不整脈、慢性心不全
- 脳卒中(脳梗塞・脳出血)
- 2型糖尿病
糖尿病については、肥満でない人でもSASがあるだけでリスクが上がると報告されています。日中の眠気による、居眠り運転や事故の危険も見のがせません。
こわがらせたいわけではありません。ただ、適切な治療で無呼吸を減らせば、こうしたリスクは下げられます。早めに気づくことが何より大切です。
睡眠時無呼吸症候群の検査(簡易検査・PSG)

SASの診断は、睡眠中の呼吸や酸素の状態を測る検査で行います。多くはご自宅でできる簡易検査から始めます。
簡易検査(自宅でできる)
簡易検査は、小さな機器を指や鼻につけて一晩眠るだけの検査です。自宅で、いつもどおりに眠れます。
指につけたセンサーで血液中の酸素を、鼻のセンサーで気流を記録します。無呼吸や低呼吸が1時間に何回あるかを調べ、重症度の目安をつかみます。
入院の必要はなく、体への負担もほとんどありません。まずはこの検査で、精密検査が必要かどうかを判断します。
精密検査(PSG・終夜睡眠ポリグラフ)
PSG(終夜睡眠ポリグラフ検査)は、より詳しく調べる精密検査です。
脳波・心電図・気流・胸腹部の動き・酸素などを同時に記録します。眠りの深さと無呼吸の関係まで細かくわかるため、診断の精度が高い検査です。
PSGは一泊入院で行う施設が多く、当院では連携先をご案内します。1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数(AHI)で、重症度と治療方針を決めていきます。
睡眠時無呼吸症候群の治療(CPAP・マウスピース・手術)

治療は、重症度と原因に合わせて選びます。中等症〜重症ではCPAP、軽症〜中等症ではマウスピースが中心です。
あわせて、減量や横向き寝、飲酒を控えるといった生活習慣の見直しも大切になります。
CPAP療法(シーパップ)
CPAPは、鼻につけたマスクから空気を送り、気道を開いた状態に保つ治療です。中等症〜重症のSASで、標準的に使われます。
寝ている間、機械が一定の圧力で空気を送ります。のどがふさがるのを防ぐため、無呼吸やいびきが大きく減り、日中の眠気が改善する方が多い治療です。
CPAPは、検査で一定の基準を満たすと保険で使えます。原則として精密検査でAHI20以上、簡易検査でAHI30以上が目安です。
2026年6月の見直しで、この基準が変更になりました。AHIがそこまで高くなくても、高血圧などの合併症があれば対象になる場合があります。適応の判断は、検査結果をもとに医師が行います。
マウスピース(口腔内装置)
マウスピースは、下あごを少し前に出して気道を広げる装置です。軽症〜中等症の方や、CPAPが合わない方に向いています。
就寝時に装着し、あごの位置を保つことでのどの狭まりを防ぎます。作製は歯科で行い、保険が使える場合は3割負担でおよそ1万5千〜3万円が目安です。
どちらの装置が合うかは、重症度やあごの形で変わります。まずは検査で状態を確かめてから、無理なく続けられる方法を一緒に考えます。
鼻・のどの治療、生活習慣の見直し
気道が狭くなる原因が鼻やのどにある場合は、その治療で無呼吸が改善することがあります。
鼻づまりが強いと、口呼吸が増えてSASが悪化し、CPAPも続けにくくなります。当院は鼻に特化し、鼻中隔弯曲症などに対する日帰り手術を保険診療で行っています。
鼻の通りがよくなると、CPAPの空気が入りやすくなり、治療が続けやすくなることもあります。無呼吸そのものの根本治療ではありませんが、鼻づまりが強い方には意味のある選択肢です。
あわせて、次の生活習慣も見直してください。治療の効果を高める土台になります。
- 減量(首まわりの脂肪を減らす)
- 横向きで寝る(あお向けは舌が落ちやすい)
- 寝る前の飲酒を控える(のどの筋肉がゆるむ)
- 禁煙(のどの炎症・むくみを防ぐ)
いびきそのものが気になる方は、いびきの原因と対策・治療方法 もあわせて参考にしてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 無呼吸なのに、お腹は動いているのはなぜですか?
閉塞型では、のどがふさがっても体は息を吸おうとし続けます。そのため胸やお腹は動きますが、空気は通っていません。動きの有無ではなく、空気が流れているかで判断します。
Q. いびきがなければ、睡眠時無呼吸症候群ではないですか?
必ずしもそうとは限りません。いびきが目立たなくても、浅い呼吸(低呼吸)で睡眠の質が下がっていることがあります。日中の強い眠気が続くなら、一度検査をおすすめします。
Q. 若くてやせ型でも、なる可能性はありますか?
あります。あごが小さい、扁桃が大きい、鼻づまりがあるなど、気道が狭い要因があれば体型に関わらず起こります。若い方でもいびきや眠気が続く場合は調べてみてください。
Q. 検査は入院が必要ですか?
まずは自宅でできる簡易検査から始めることが多いです。より詳しく調べる必要があれば、一泊入院のPSG(精密検査)を行います。簡易検査の段階では入院は要りません。
Q. CPAPは保険が使えますか?
検査で一定の基準を満たせば、保険診療で使えます。原則は精密検査でAHI20以上などが目安ですが、合併症があれば対象が広がることもあります。適応は検査結果で判断します。
Q. 鼻づまりの治療で、いびきや無呼吸はよくなりますか。
鼻づまりが強い方は、鼻の治療によって睡眠中の呼吸が楽になったり、CPAPを続けやすくなったりすることがあります。ただし、鼻の治療だけで無呼吸がすべて改善するわけではなく、重症度に応じた治療を組み合わせることが大切です。
また、重症の睡眠時無呼吸症候群(SAS)でCPAPを使用している方が鼻の手術を受ける場合は注意が必要です。術後に鼻へ止血剤を入れることで、一時的に呼吸状態が悪化することがあるため、日帰り手術ではなく、入院のうえ酸素投与など呼吸管理ができる環境で手術を行う場合があります。
まとめ|いびき・無呼吸が気になったら武田耳鼻咽喉科へ

睡眠時無呼吸症候群は、大きないびきや日中の眠気にあらわれる、ありふれた病気です。放っておくと、高血圧や心臓・脳の病気のリスクを高めます。
「無呼吸なのにお腹は動く」のは、閉塞型でよく見られる特徴です。動きの有無ではなく、空気が通っているかどうかが大切なポイントになります。
院長として伝えたいのは、「気づいた今が、いちばん早いタイミング」ということです。適切に治療すれば、無呼吸を減らし、将来のリスクを下げていけます。がまんを続ける必要はありません。
当院は、みずほ台駅西口から徒歩1分。鼻に特化した診療を強みとし、いびきや無呼吸の背景にある鼻の状態まで、保険診療で一緒に確認します。検査から治療のご案内まで対応しています。
「いびきを指摘された」「寝ても疲れが取れない」。そんな方は、一度ご相談ください。ご予約はWEB予約・お電話・LINEから承っています。
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また、当院ではオンライン資格確認を推進しています。
この記事の監修者
・埼玉医科大学医学部卒業
・日本大学附属板橋病院 臨床研修医終了
・東京慈恵会医科大学 耳鼻咽喉科 勤務
・東京慈恵会医科大学附属第三病院 耳鼻咽喉科 勤務
・東京都保健医療公社 豊島病院 耳鼻咽喉科 勤務
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