鼻中隔湾曲症と斜鼻の違いとは?



「鼻が曲がっている」と一口に言っても、それが「鼻中隔湾曲症」なのか「斜鼻(しゃび)」なのか、正確に理解している人は少ないかもしれません。見た目や症状が似ているように感じられるため、混同されることもよくあります。しかし、これらは根本的に異なる状態であり、原因や治療法も違ってきます。
この記事では、鼻中隔湾曲症と斜鼻の決定的な違いを、見た目や症状、原因、そして治療法に焦点を当てて分かりやすく解説します。あなたの鼻の悩みがどちらに当てはまるのか、そしてどこに相談すべきなのかを知るための参考にしてください。
鼻中隔湾曲症と斜鼻は何が違うの?

まず、この二つの状態が具体的に何を指すのかを見ていきましょう。
鼻中隔湾曲症とは?
鼻中隔湾曲症は、鼻の穴を左右に隔てる壁である「鼻中隔」が、大きく曲がっている状態を指します。鼻中隔は、後方は骨、前方は軟骨でできており、通常はまっすぐですが、湾曲していると片方、あるいは両方の鼻の通り道を狭めてしまいます。
この状態は、主に鼻の機能(呼吸)に影響を及ぼすのが特徴です。外見上は鼻が曲がっているように見えなくても、鼻の中では大きく曲がっているケースが少なくありません。
斜鼻(しゃび)とは?
一方、斜鼻(しゃび)は、鼻の骨や軟骨が曲がっていることで、鼻筋全体が曲がって見える状態を指します。つまり、鼻の外見(見た目)に影響を及ぼすのが主な特徴です。鼻筋がCの字やSの字のように曲がって見えたり、鼻の先端が左右どちらかに寄っていたりするなど、顔の中心線に対して鼻がずれている状態を指します。
鼻中隔湾曲症と斜鼻の見分け方

では、この二つの違いはどのように見分ければ良いのでしょうか。主に「見た目」と「症状」に注目すると分かりやすいでしょう。
見た目の違い
鼻中隔湾曲症 | 鼻の中の壁が曲がっているため、外見上は鼻がまっすぐに見えることが多いです。 鼻の形自体は左右対称で、曲がっているようには見えないのが一般的です。 |
斜鼻 | 鼻の骨や軟骨全体が曲がっているため、鼻筋そのものが曲がっていることが目視で分かります。 鼻の穴の形が左右で異なっていたり、鼻の先端がずれていたりすることもあります。 |
症状の違い
鼻中隔湾曲症 | 主な症状は、曲がっている側の鼻づまりです。常に片方の鼻が詰まっている感じがしたり、寝るときに詰まりやすかったりします。鼻づまりからくる口呼吸、いびき、睡眠の質の低下、副鼻腔炎の併発などもよく見られます。これらは、鼻の空気の通りが悪くなることによって生じる機能的な問題です。 |
斜鼻 | 鼻が曲がっていても、必ずしも鼻づまりなどの機能的な症状があるとは限りません。見た目の問題が主で、鼻呼吸に支障がないケースも多くあります。ただし、斜鼻がひどい場合や、同時に鼻中隔湾曲症を併発している場合は、鼻づまりなどの症状が出ることもあります。 |
鼻が曲がる原因は?

鼻が曲がる原因は、鼻中隔湾曲症と斜鼻で異なります。
鼻中隔湾曲症の原因
鼻中隔湾曲症の最も一般的な原因は、成長の過程で自然に生じるものです。鼻中隔を構成する軟骨と骨の成長速度が異なるため、成長とともに自然と曲がってしまうことがほとんどです。多くの人は多かれ少なかれ鼻中隔が曲がっていますが、それが症状として現れるほど大きく曲がっている場合に鼻中隔湾曲症と診断されます。
その他、子供の頃の鼻や顔面への外傷(ケガ)が原因で鼻中隔が曲がることもあります。
斜鼻の原因
斜鼻の原因としては、主に以下の二つが挙げられます。
- 先天性:
生まれつき鼻の骨や軟骨の形がいびつである、あるいは成長の過程で不均等に発達した結果、鼻筋が曲がってしまうケースです。 - 外傷性:
鼻への強い衝撃や骨折など、過去の外傷(ケガ)が原因で鼻の骨格が変形し、曲がってしまうケースが非常に多く見られます。特に鼻骨骨折を適切に治療しなかった場合などに斜鼻になることがあります。
斜鼻の場合、その曲がりの原因が鼻中隔の曲がりにあることも多く、斜鼻と鼻中隔湾曲症が合併しているケースも少なくありません。
鼻中隔湾曲症と斜鼻の治療法|何科に相談?

それぞれの症状と原因が異なるため、治療法も専門とする科も変わってきます。
鼻中隔湾曲症は耳鼻咽喉科
鼻中隔湾曲症の治療は、主に耳鼻咽喉科で行われます。 治療の目的は、鼻の機能改善(鼻呼吸のしやすさ)です。
症状が軽度であれば、鼻づまりの原因となるアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎の薬物治療で症状の緩和を目指します。薬では改善しない、あるいは症状が重い場合には、鼻中隔矯正術(びちゅうかくきょうせいじゅつ)という手術が検討されます。この手術は、曲がった鼻中隔の一部を矯正または切除することで、鼻の通り道を広げることを目的とします。
斜鼻は形成外科や美容外科
斜鼻の治療は、主に形成外科や美容外科で行われます。 治療の目的は、鼻の外見(見た目)の改善です。
斜鼻の手術は、曲がった鼻の骨や軟骨を削ったり、移植したりして、鼻筋をまっすぐにする処置を行います。これは美容的な側面が強く、機能的な問題がなければ保険適用外となる場合がほとんどです。
ただし、斜鼻の人が鼻中隔湾曲症を併発している場合、耳鼻咽喉科と形成外科が連携して治療を行うこともあります。この場合、見た目の改善と機能改善の両方を目的とした手術が検討されます。
まとめ

鼻中隔湾曲症と斜鼻は、どちらも鼻が曲がっている状態を指しますが、その本質は大きく異なります。
鼻中隔湾曲症 | 鼻の内部の壁が曲がっている状態。主に鼻呼吸の機能に影響を及ぼし、鼻づまりなどが主な症状。耳鼻咽喉科で治療。 |
斜鼻 | 鼻の外見全体が曲がっている状態。主に見た目に影響を及ぼし、機能的な症状がないこともある。形成外科や美容外科で治療。 |
もし、ご自身の鼻の曲がりが気になる、あるいは鼻づまりなどの症状でお困りであれば、まずは耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。そこで機能的な問題の有無を確認し、必要であれば形成外科への相談を検討するという流れが良いでしょう。専門医に相談して、適切な診断と治療を受けることが、快適な生活を取り戻す第一歩です。
この記事の監修者

・埼玉医科大学医学部卒業
・日本大学附属板橋病院 臨床研修医終了
・東京慈恵会医科大学 耳鼻咽喉科 勤務
・東京慈恵会医科大学附属第三病院 耳鼻咽喉科 勤務
・東京都保健医療公社 豊島病院 耳鼻咽喉科 勤務
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