中耳炎を繰り返すのはなぜ?|原因・治療法・家庭でできる予防法を耳鼻科医が解説

中耳炎を繰り返すのはなぜ?|原因・治療法・家庭でできる予防法を耳鼻科医が解説

「この前治ったばかりなのに、また耳が痛いって泣いてる…」

「なぜうちの子ばかり、こんなに何度も中耳炎になるの?」

お子さまが何度も中耳炎を繰り返すと、看病するご家族の負担はもちろん、「私の育て方が悪いのかな」とご自身を責めてしまう保護者の方も少なくありません。

実は、何度も繰り返す中耳炎は「反復性中耳炎」と呼ばれ、特に小さなお子さまには決して珍しくない症状です。

この記事では、耳鼻科医の視点から、なぜお子さまが中耳炎を繰り返してしまうのか、その根本的な原因と、ご家庭で実践できる具体的な予防策、そして専門的な治療法について、分かりやすく解説します。

反復性中耳炎とは?

反復性中耳炎とは?

反復性中耳炎とは、その名の通り、短い期間のうちに急性中耳炎を繰り返す状態を指します。医学的には、以下のような場合に診断されることが一般的です。

  • 過去6ヶ月以内に3回以上、急性中耳炎にかかる
  • 過去1年間に4回以上、急性中耳炎にかかる

特に、生後6ヶ月から2歳くらいまでのお子さまに最も多く見られます。

なぜ?子どもの中耳炎が繰り返す、4つの主な原因

なぜ?子どもの中耳炎が繰り返す、4つの主な原因

お子さまの中耳炎が繰り返すのは、決して保護者の方の育て方のせいではありません。その原因の多くは、お子さま特有の「体のつくり」や「環境」にあります。

免疫機能の未熟さ(特に2歳未満)

赤ちゃんや小さなお子さまは、まだ様々なウイルスや細菌に対する免疫(抵抗力)が十分に発達していません。そのため、風邪をひきやすく、それが中耳炎に繋がりやすくなります。

集団保育や保育園などでの感染リスク

保育園や幼稚園などの集団生活が始まると、どうしても他のお子さんから風邪などの感染症をもらう機会が増えます。風邪をひく回数が増えることは、そのまま中耳炎を繰り返すリスクを高めることになります。

耳管の構造

子どもは耳管(中耳と鼻の奥をつなぐ管)が成人に比べて短く、水平に近いため、鼻や喉からの病原体が中耳に移りやすい構造です。これは、成長とともに自然に解消されていく構造的な問題です。

おしゃぶりの常用

長期間・長時間のおしゃぶりの使用は、鼻の奥の環境に影響を与え、中耳炎のリスクを高める可能性があるという研究報告があります。

繰り返す中耳炎は自然に治る?放置するリスクについて

繰り返す中耳炎は自然に治る?放置するリスクについて

「そのうち治るだろう」と軽く考え、中耳炎を放置してしまうのは危険です。急性中耳炎が治りきらずに繰り返すと、鼓膜の奥に滲出液という液体が溜まり続ける「滲出性中耳炎」に移行することがあります。

滲出性中耳炎は痛みが少ないため気づかれにくいですが、聞こえが悪くなる(難聴)原因となり、言葉の発達の遅れなどに影響を及ぼす可能性もあります。耳の痛みを訴えなくても、「呼んでも振り向かない」「テレビの音を大きくする」といったサインが見られたら、早めに耳鼻科を受診しましょう。

繰り返す中耳炎の治療法

繰り返す中耳炎の治療法

反復性中耳炎の治療は、急性中耳炎の治療と予防を組み合わせて行います。

抗菌薬の内服と点耳薬

炎症を引き起こしている細菌を退治するため、抗菌薬の飲み薬や、耳の中に直接入れる点耳薬が処方されます。症状が良くなっても、医師の指示通り最後まで薬を使い切ることが非常に重要です。

鼓膜切開

炎症がひどく、鼓膜の奥に膿が大量に溜まってしまった場合に、鼓膜を少しだけ切開して膿を排出させる処置です。膿を出すことで痛みや熱が急速に和らぎ、治癒を早める効果があります。切開した鼓膜の穴は、通常約1週間で自然に塞がります。

鼓膜チューブ挿入術

反復性中耳炎を根本的に改善するための、非常に有効な治療法です。鼓膜を切開した後、換気のための小さなチューブを挿入します。これにより、中耳に空気が通りやすくなり、膿や液体が溜まりにくくなります。チューブは半年〜2年程度で自然に抜け落ちることが多いですが、その間に耳管が成長し、中耳炎を繰り返さなくなることが期待できます。

中耳炎を繰り返さないための予防法

中耳炎を繰り返さないための予防法

治療と並行して、ご家庭でできる予防策を実践することが何よりも大切です。

ワクチンの接種

肺炎球菌は中耳炎の主な原因菌のひとつ。2025年6月時点では20種類の肺炎球菌に対応したワクチン「プレベナー20」が定期接種として用いられています。定期予防接種をスケジュール通り接種することがとても大切です。

  •  2歳未満でも効果的に免疫を獲得できる
  •  保育園などでの集団感染を防ぐ「集団免疫効果」も期待

生活習慣の見直し

鼻水を放置すると細菌が耳へと移動しやすくなります。そこで、吸引器の使用がおすすめです。ご家庭で使用される場合はメルシーポットがおすすめです。

また、おしゃぶりは中耳炎のリスクとなる報告があります。日常的に使っている場合は、おしゃぶりの使用頻度を減らすことも考えても良いでしょう。

頻度は低いですが、基礎疾患としてアレルギー性鼻炎や気管支喘息、胃酸逆流、免疫不全などが隠れている可能性があります。気になる場合はご相談ください。

漢方薬で体質改善

十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)などの漢方薬も有効です。実際に、反復性中耳炎のお子さんに十全大補湯を3か月間服用させた研究では、以下のような効果が報告されました。

  • 急性中耳炎の発症頻度が有意に減少
  • 風邪(鼻かぜ)の回数も減少
  • 抗菌薬を使う日数も短縮

漢方は、感染を予防する「体の底力」を高めてくれるアプローチといえます。

まとめ

まとめ|気になる症状があれば耳鼻科での診察を

お子さまが中耳炎を繰り返すのは、お子さま自身の体の構造が大きく影響しており、決して保護者の方のせいではありません。まずはそのことを理解し、ご自身を責めないでください。

その上で、ご家庭でできる最も重要な予防策は「鼻水のケア」です。風邪をひいたら、熱や咳だけでなく、鼻の症状にも注意を払い、こまめに鼻水を吸引してあげましょう。

そして、信頼できるかかりつけの耳鼻科医を見つけ、治療方針を相談しながら、焦らずじっくりと治療を続けていくことが大切です。この記事が、少しでも皆さまの不安を和らげ、日々のケアの一助となれば幸いです。

この記事の監修者

院長よりご挨拶
武田耳鼻咽喉科 院長
武田 桃子

・埼玉医科大学医学部卒業
・日本大学附属板橋病院 臨床研修医終了
・東京慈恵会医科大学 耳鼻咽喉科 勤務
・東京慈恵会医科大学附属第三病院 耳鼻咽喉科 勤務
・東京都保健医療公社 豊島病院 耳鼻咽喉科 勤務

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